● こんにちは/突然ですが


以前はフラッシュというものが嫌いでしたが、やっと最近それを許せるようになってきたみたいです。いや、好きになったのです。私が住んでいる街には都市部とは違い、まだ夜になると闇が残ります。真夜中に自動車で田舎のあぜ道を走っていて、突然ヘッドライトが照らす狐か狸のケモノを発見したように、私のコンパクトデジタルカメラが放つサーチライトに何かが浮かび上がるんです。フラフラと自転車に乗って気になる風景や物にコンパクトデジタルカメラのモニターを合わします。夜なので昼間と違いモニターには構図を決める意図は黒く塗り潰されてしまいます。その閃光の瞬間までどういった写真が撮れるかわかりません。文字どおりのサーチライト。はて、さて、私は何を夜の闇の中に探し求めているのだろうか?今日という一日の昼間が過ぎ去り、私はもう一度昼間には見つけることができなかった何かを夜に限り探しているのだろうか?光の差し込む部屋にあるテレビの中で見た、狂おしいほど愛しい「蒼井そら」の肉体を探しているのだろうか?

ある日の夜、私は舗装したてのアスファルトに引かれたどこまでも続く真っ白なラインを、カメラの真っ黒なモニターに映していた。フラッシュを焚いた瞬間、向こうから誰かが走って来ていることに気づいた。ランニングシャツにランニングパンツの少年。少年は私に気づいた様子もなく私の横を通り過ぎ、東の方を向いてタンタンと走り去って行った。


● 田舎だからこそ夜がはえる写真があるということ